吉田修一さん『パレード』をご紹介します！
人気俳優の恋人である琴美は、毎日彼氏からの電話を待ちながら、ルームシェアをして暮らしている。
良介は大学生で、先輩の彼女と関係を持っている。
イラストレーターの未来は、仕事と酒浸りでほとんど部屋にいない。
部屋に最も長く住んでいる直輝は、面倒見のいい年長者。
生活時間もばらばらで、性格もちぐはぐな４人だけど、それなりに充実した日々を送っていた。
ある朝、琴美が目を覚ますと、部屋に見ず知らずの少年がいた。
少年はサトルと名乗り、夜の仕事をしているという。
奇妙な共同生活にサトルが加わったことで、それぞれの生活が少しずつ変わっていく・・・
読み終える直前まで、どこにでもあるちょっとおしゃれな物語としか思っていませんでした。
男女５人がさばさばした共同生活をしているだけで、たまに引っかかる部分もありますが、おおむね仲良く、でも干渉することはほとんどありません。
ただ、ルームシェアなんていうと仲良しグループがわいわいきゃっきゃ暮らしていそうですが、彼らは真逆ですね。
ルームメイトが集合すること自体少なく、一緒に住んでいるとは思えないほど希薄な関係です。
言ってみれば、マンションの隣人ぐらい赤の他人。
彼らは素性を知らない人間でも、一緒に生活できてしまいます。
長い付き合いがあっても、その人の全部を知るのは難しいですよね。
意外な一面は誰にでもあるかもしれません。
けれど全部知ることはできないにしても、名前しか知らない人間も受け入れてしまえるというのは、すごいことですね。
琴ちゃんに関しては、新しくやって来たサトルにはたいした興味を持たないのに、隣の部屋で行われている怪しい商売にはお金も惜しまず調査していました。
不思議なものですね。
もっとのっぴきならない秘密を持っている人が、近くにいるかもしれないのに・・・
彼らはそうするつもりでそうしているのか、わかりませんが、それぞれ自分の“なにか”を隠しています。
誰もそれに気づかないのかもしれませんし、実は全員が気づかないふりをしているだけかもしれません。
それでも、必ず誰かが手を差し伸べてくれて、いつの間にか普段通りの自分に戻ってしまいます。
ひとの頭は、自分にかかわりのない小さな違和感なんか、すぐに忘れてしまうようにできているのかもしれませんね。
だから事件があっても気づかないし、世界は変わりなく周り続けていくんでしょう。
さて、ブックマニアでは、今日ご紹介した
『パレード』
以外にも、吉田修一さん作品
『さよなら渓谷』
『怒り』
『横道世之介』
『パーク・ライフ』
『悪人』
などを買取強化しております。
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2014/8/21 カテゴリ： 査定情報
